MENU

第10回 トレーニング器具はどれが一番よいか?

ランニングコストが安い

Q.マシンや、ダンベル、バーベル等のトレーニング器具の中で、どれが一番よい選択なのですか? 抽象的で申し訳ないのですが、選択基準のアドバイスをお願いします。

A.世界中にたくさんのメーカーが存在し、一口にトレーニングマシン言っても多種多様あり、本当に多岐に及んでいます。例えばレッグエクステンションだけでも、私はヨーロッパ、アメリカ、そして日本製、計10社近くのマシンを経験してきました。どれも特徴が異なり、一長一短です。いろいろなマシンを試せる機会があれば、感覚を記憶しておくと良いでしょう。自分にとってフィーリングの良いマシンとイマイチのマシンがあるので、マシンに関しては、常に試してみる意識が大事ですね。
マシンについて深い蘊蓄にはまりそうなので、話を戻しましょう。

エアロバイクをいくら速く漕げても、実際の自転車が乗れるようにはなりません。これは、マシンベンチプレスを高重量でできても、バーベルベンチプレスが、同じようにできないことにも通じます。なぜでしょう?
バーベルの場合、バランスを取りつつ、ブレないように補助筋群がしっかり働いている点が大きな違いとなります。

そもそも、筋肥大の前には筋力の向上があり、これは、主に筋肉と脳-神経の促通によるものです。神経系の発達は、筋肥大の前段階として重要なポイントです。グラグラと不安定感を伴いながらバーベルを挙げ下げすることは、神経系の促通という点においては大切な経験であり、これは、バーベルトレーニングの優れた特徴です。
原始的な器具が時代に淘汰されないのは、こうした素晴らしい特性を持つからに他なりません。

バーベルをさらに不安定にしたのが、ダンベルです。例えば、バーベルベンチプレスが100kg×8回できても、ダンベル50kg(左右)を8回は挙がりません。これは、よりバランスを取りつつ、補助筋群も最大限に稼働するからです。

最後にマシンに目を向けると、安定感が格段に増し、高重量が扱えます。軌道が決まっている点も、安定的かつ正しいフォーム獲得に一役買っています。安定軌道で高重量が扱えるマシン。不安定と最大限戦うダンベル。バーベルは、その中間と言えるでしょう。

身体のコンディションが良いという条件で一つ選べと言われたら、私ならバーベルを選ぶでしょう。その理由は、まず、不安定と高重量が両立している点。常に、身体の中心部である脊柱起立筋や腹筋群などの体幹部分からの力の発現を要求される。これがバーベルの特徴です。
中心部から末端まで高い緊張をもって、最大限の力を発揮でき、全身の発達を促すことができるのがバーベルです。ちなみに短いバーベルほど重く感じ、長いと軽く感じます。10kgの短いバーと20kgの長いバーでベンチプレスを行った場合を比べると、セット重量が同じでも10kgほど体感重量が違うと思います。

再度、ダンベルに話を展開します。効く感覚や力を出し切る感覚が、よくない体環境(例えば左右で筋力が違ったり、感覚的にしっくりこなかったり)の場合、より自由度の高いダンベルで、フィーリングの良い軌道や角度を探すという上級テクニックがあります。稼働域の大きさ含め自由度合いが高いですから、より創造力をもって、いろいろな重さで取り組むべきです。
ちなみに私はサイドレイズでは4種類のフォームを採用し、8kgから40kgのメインセットを現在採用しています。全てが高重量と感じるセットです。このように、展開の幅広さがダンベルの特徴です。気をつけなくてはならないことは、体幹からの力の発現が必要なのはバーベルと一緒で、ともすると、手先や肩まわりだけで扱ってしまいがちなのが、初心者のダンベルトレーニングで見受けられる間違いです。 

先程も触れましたが、左右差を改善する点が、一般的に認知されているダンベルの優れた特徴です。弱い側を主役としてトレーニングし、弱い側が限界まで行ったら強い側も終了です。あくまで、弱い側の底上げを主眼とすべきです。ダンベルは、不安定な分、握力強化や前腕発達にも優れた特徴があります。

最後にもう一度マシンについて。安定の中で高重量が扱えたり、対象筋肉を容易にアイソレート(限定集中)してくれたりと、非常に効率的に誰もがその効果を引き出しやすい器具と言えるでしょう。バーベルやダンベルで間違った癖があっても、矯正してくれる作用もマシンの優れた特徴です。
私が効くマシンに出会えた時には、必ずメーカーをチェックします。欧米の大型のマシンが合わなかった人が女性用のマシンでしっくりきた、といった話も聞いたりしますので、とにかく試し、そのマシンを体感することですね。マットを挟んで姿勢を調節したり、独自の種目を作ったりといろいろ応用していくこともできます。

私の場合、時々、座るシーテッドタイプのマシンでわざと立ち、椅子を内腿で強く挟みながら使ったりします。全身の連動や緊張は、トレーニングのマル秘テクニックの一つです。またマシンは、コンディションが悪い日や、今ひとつやる気が湧かない日の救世主となる存在とも言えます。安定感が、ある意味で心理的にも優しいわけです。動作中、負荷が抜けないものもマシンの長所ですから、賢く利用しましょう。

マシン、バーベル、ダンベルは、実は、それぞれに補完しあっています。その中でバーベルを軸にして、トレーニングをデザインしていったらよいと思います。マシンでフォームや高重量を獲得し、ダンベルで、不安定からの最大限の神経系の発達を狙い、バーベルで、全てを昇華させるような感じでしょうか。

とは言え、それぞれを駆使して、その日のコンディションにベストなチョイスで、トレーニングを続けていく柔軟性が大切です。私自身、バーベルから入る日とダンベルから入る日があり、そのどちらも効果的にやれそうにないと感じた時は、刺激を変えるという感覚で、マシンから入ります。

tweetでフォローする Instagramでフォローする
LINE友達募集